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インボイス制度の中での請求書等の種類・判断基準の整理がつかず混乱していますよね?
実はこれ、税理士界隈でも混乱をきたしています。
これから、請求書等の判断基準はもちろん、適格請求書の内容から会計処理の具体例まで詳しく説明していきます。
読み終わったら、インボイス制度の中での請求書等の取扱いがわかるようになるはずです。
「インボイス制度の請求書・領収書」は、一般的に「適格請求書、適格簡易請求書、適格返還請求書(以降、適格請求書等)」を意味します。適格請求書等とそれ以外の請求書等では消費税の取り扱いが異なります。一方で事業者の状況や取引内容によってはそれ以外の請求書等でも適格請求書等とみなされるケースがあります。見ていきましょう。
インボイス制度とは、適格請求書等の保存を要件に支払った消費税の控除を認める制度です。この適格請求書等は税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し登録された事業者しか発行できません。したがって、インボイス制度の開始後は登録をしていない事業者が発行する請求書等では、取引先は消費税の控除ができず損をすることになります。なお、インボイス制度の登録をした方は、必ず消費税の申告をする必要(申告義務)があります。
図1-1 インボイス制度の導入前後の比較
インボイス制度について詳しくお知りになりたい方は、「税理士が解説!インボイス制度とは」をご参照ください。
事業者の状況や取引内容によっては、適格請求書等の保存がなくても従前どおり、つまり適格請求書等に該当するかの確認が不要(①~③)になります。フローチャートを作成しましたのでまずは見ていきましょう。
図1-2 フローチャート
① 請求書等の確認不要
まず、事業者が次のいずれかに該当する場合には、受け取った請求書等の確認の必要はありません。消費税の計算自体が必要ない、または消費税の計算はあるもののみなし計算とされるためです。
簡易課税制度、2割特例について詳しくお知りになりたい方は、「税理士が解説!簡易課税制度(2割特例)とは」をご参照ください。
② 中小事業者等に対する事務負担の軽減措置
次に、事業者が次に該当する場合には、一取引で1万円未満(税込)は、受け取った請求書等の確認の必要はありません。適格請求書等の保存が不要とされる取引のためです。
※1 一般的に個人事業者は前々年、法人は前々事業年度
※2 一般的に個人事業者は前々年、法人は前々事業年度の初日から6か月間
③ 旅費等の精算の場合
また、取引が次のいずれかに該当する場合にも、受け取った請求書等の確認の必要はありません。この適用を受ける旨を帳簿に記載(3万円未満の自動サービス等については設置場所も記載)することで、適格請求書等の保存が不要とされる取引のためです。
これら①~③に該当しない取引については適格請求書等に該当するかの確認が必要になります。
受け取った請求書等が適格請求書等の場合は④、それ以外の請求書等(区分記載請求書)の場合は⑤の取扱いとなります。
④ 課税事業者から適格請求書を受け取った場合
適格請求書等の保存により、インボイス制度導入前と同様に消費税の控除を受けることができます。
⑤ 免税事業者等から請求書等を受け取った場合
それ以外の請求書等についてはインボイス制度導入前と同様に消費税の控除を受けることができません。ただし、一定期間は従来の請求書等(区分記載請求書)の保存とともに経過措置の適用を受ける旨を帳簿に記載することで、一定割合の消費税の控除を受けることができます。
図1-3 経過措置
フローチャートの①~③に該当しない取引については、適格請求書等に該当するかの確認が必要になります。それでは実際に適格請求書等(適格請求書、適格簡易請求書、適格返還請求書)を見ていきましょう。
図1-4 適格請求書(国税庁HPより引用)
適格請求書の記載内容は次のとおりです。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 税率ごとに区分した課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額の合計額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
一見、必要な記載内容が多く感じるかと思います。しかし、インボイス制度導入前の請求書等(区分記載請求書)から増えたのは次の3つのみです。請求書等に記載があれば、適格請求書に該当すると考えてよいでしょう。確認してみましょう。
① 登録番号 ④ 適用税率 ⑤ 消費税額等
参考:インボイス制度導入前の請求書等(区分記載請求書)の記載内容
① 書類の作成者の氏名又は名称
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
⑤ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
また、コンビニ(小売業)など領収書の発行が多い次の業種では、記載内容が簡易となる適格簡易請求書の発行が認められています。
① 小売業 ② 飲食店業 ③ 写真業 ④ 旅行業 ⑤ タクシー業
⑥ 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するもの)
⑦ その他これらに準ずる事業で不特定かつ多数の者に対する事業
図1-5 適格簡易請求書(国税庁HPより引用)
適格簡易請求書の記載内容は次のとおりです。適格請求書の記載内容にあった、④適用税率と⑤消費税額等はいずれかでよく、⑥の相手先の記載は不要となります。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
インボイス制度導入前の請求書等(区分記載請求書)から増えたのは次の2つのみです。請求書等に記載があれば、適格請求書に該当すると考えてよいでしょう。確認してみましょう。
① 登録番号 ⑤ 消費税額等又は適用税率
参考:適格請求書の記載内容
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 税率ごとに区分した課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額の合計額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
このほか、売上の値引き等が行われた場合には、減額に対して発行される適格返還請求書もあります。参考までに紹介します。
図1-6 適格返還請求書(国税庁HPより引用)
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日
③売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率
実際にお手元にある請求書等を見てみてください。記載内容が揃っていないと適格請求書等になりません。では、そのうち登録番号はどのように調べるのか、記載内容が揃っていないケースはどうするのか、説明していきます。
登録番号は正しいものか確認をします。登録番号は公表サイトで確認を行うことができます。また、会計ソフトによっては、会社名や個人名からの検索や、AI読み取りにより確認ができます。
① 登録番号
まず、登録番号は模様や裏面の可能性があります。お手元の請求書等の確認を行ってみましょう。
図1-7 登録番号の記載例(模様)
② 再発行
次に、「相手の求めに応じて適格請求書等を発行」という法律の建付け(消法57の4①)になっていますので、支払先に再発行を依頼してみましょう。また、支払先がインボイス制度の登録をしていても通知がされるまで時間がかかっている可能性があります。支払先に確認を行いましょう。
③ 複数で記載内容を補完
実は適格請求書等をもらっている可能性があります。相互関連性を担保できれば、複数の請求書等(納品書と請求書など)の組み合わせで記載内容が揃っていれば、適格請求書等に該当します。既にもらっている書類で記載内容を満たしているか確認を行いましょう。
④ ダウンロード
また、WEBで適格請求書等のダウンロードが必要なものもあります。次の取引はダウンロードにより取得ができる一例です。確認してみましょう。
WEB会員サイトの注文履歴から適格請求書(支払い明細書)を取得します。
WEB会員サイト「ビジネスTEPCO」「くらしTEPCO web」「Web検針票」から適格請求書を取得します。(東京ガス、東京都水道局は検針票が適格請求書)
WEB会員サイト「ETC利用照会サービス」から適格請求書(利用証明書)を取得します。なお、クレジットカード利用明細書と高速道路会社等ごとに任意の一取引の利用証明書を併せて保存することで、適格請求書の保存があるものとされます。
TKCの会計ソフトを例にあげて説明します。
適格請求書等の保存(保存不要も含む)がある場合は課税区分「5」を、それ以外の請求書等(区分記載請求書)の保存がある場合は課税区分「52」を選択して入力を行います。申告時に課税区分「52」は経過措置の対象として集計されます。
図1-8 入力画面イメージ
登録番号がわからない場合には、取引先情報を開いて会社名や個人名からの検索も可能です。
図1-9 取引先情報イメージ
また、ScanSnapというスキャナーに接続し、請求書等の次の記載内容を読み取り、取り込むこともできます。
取引年月日、電話番号、事業者登録番号、取引先名、取引金額、消費税等
図1-10 スキャン画面イメージ
今回は「インボイス制度の請求書・領収書の見方」について書き出してみました。
「インボイス制度の請求書・領収書の見方」は次の手順で行うことがわかりました。
① フローチャートで適格請求書等が必要か確認
② ①で必要な場合は、適格請求書等があるか、あれば記載内容が揃っているか確認
③ ②を満たさない場合は、再発行の依頼やダウンロードを試す
④ それでも適格請求書等がなければ経過措置を適用する
最後までお読み頂き有難う御座いました!
複雑怪奇な税制をわかりやすく説明し、また適切な制度の提案を行う。そしてお客様には安心して納税をしていただく。そのような想いを持って日々の業務を行っております。税金や制度について相談したいことが御座いましたらお気軽にお問合せくださいませ。