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届出書の正式名称は簡易課税制度選択届出書といいますが、実は作成するのは難しくありません。ほとんどの方は8項目の記入だけで完成します。
これから、簡易課税制度選択届出書の書き方はもちろん、簡易課税制度のメリット・デメリットまで詳しく説明していきます。
読み終わったら、その日のうちに簡易課税制度選択届出書の作成ができるようになるはずです。
簡易課税制度選択届出書は簡易課税制度を適用するために作成し、提出する届出書です。簡易課税制度の内容、届出書の書き方とその提出方法について見ていきましょう。
簡易課税制度とは、その名のとおり消費税の計算が簡易になる制度です。図1-1のように、「課税売上※1に含まれる消費税」のうち一定割合を「課税仕入※2に含まれる消費税」とみなして計算できるため、課税売上と課税仕入の両方を集計し計算する本則課税制度(原則)に比べ、事務負担を大幅に減らすことができます。インボイス制度の導入により、課税仕入の集計がさらに複雑となるため、その集計の必要がない簡易課税制度は注目されています。
※1 対価性のある収入(受取利息など非課税売上を除く)
※2 対価性のある仕入・経費・固定資産の取得(保険料などの非課税仕入を除く)
図1-1 本則課税制度と簡易課税制度の比較
簡易課税制度について詳しくお知りになりたい方は、「税理士が解説!簡易課税制度(2割特例)とは」をご参照ください。
簡易課税制度を適用するための簡易課税制度選択届出書を見てみましょう。国税庁のHPでダウンロードをすることができます。
図1-2 簡易課税制度選択届出書(国税庁HPより引用)
項目が多く複雑に見えますが、ほとんどの方は8項目で完成です。早速、書き方について見ていきましょう。
図1-3 簡易課税制度選択届出書(書き方)
① 提出先
提出先の所轄税務署を記入します。わからない方は、確定申告書の1枚目の左上(図1-4)を参考にしてください。
図1-4 申告書の提出先(国税庁HPより引用)
② 届出者の情報
届出をする事業者の情報を記入します。
③ 適用意思
簡易課税制度の適用を受けますのでチェックをつけます。
④ 適用開始課税期間
適用を受ける課税期間を記入します。個人事業主は1月1日から12月31日、法人は事業年度になります。
⑤ ④の基準期間
上記の期間に対する基準期間※3を記入します。
※3 一般的に個人事業主は前々年、法人は前々事業年度
⑥ ⑤の課税売上
上記の期間の課税売上(課税売上と輸出免税売上の合計※4)を記入します。一般的には、決算書の売上高と雑収入の科目が該当します。
(なお、この金額が5,000万円以下になっていないと適用が受けられません、確認しましょう)
※4 消費税の申告をしている期間の場合は消費税抜の金額、申告がない期間の場合は消費税込の金額
⑦ 事業内容・事業区分
届出をする事業者の事業内容と事業区分(図1-5)を記入します。
図1-5 事業区分(国税庁HPより引用)
⑧ 本則課税強制の確認
次に該当しない場合には「いいえ」にチェックをつけます。「いいえ」にチェックした方はこれで完了です。
・課税事業者選択届出書の提出がある(イ)
・消費税の申告期間中に高額特定資産※5または自己建設の高額特定資産の取得をしている(ハ)
・消費税の申告期間中に金地金等※5-2の取得をしている(ニ)
※5 1,000万円(消費税抜)以上の固定資産、商品
※5-2 200万円(消費税抜)以上の金、白金
(法人の場合は、基準期間のない期間において自社の資本金が1,000万円以上または一定の親法人等の基準期間の課税売上が5億円超に該当するか確認が必要です(ロ))
⑨ 本則課税強制の有無
次の図1-6の判定取引を行った場合には、本則課税制度が3年間強制され、簡易課税制度の適用が受けられません。⑧で「はい」にチェックをつけた方は、その期間に該当しない旨の説明を記入します。
図1-6 本則課税制度が強制される要件
※6 100万円(消費税抜)以上の固定資産
作成した簡易課税制度選択届出書は、次の図1-7の提出期限までに、税務署(上記①)に提出を行いましょう。
図1-7 届出書の提出期限
原則はニのとおり前もっての提出が必要ですが、イロハの場合は適用したい課税期間になってから提出しても適用を受けることができます。免税事業者の個人事業主の方がインボイス制度の登録をした場合には、登録希望日から12月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、登録希望日に遡って簡易課税制度の適用を受けることができます(ロ)。
図1-8 届出書の提出期限(事例)
簡易課税制度には事務負担の軽減というメリットがあることがわかりましたが、一方で届出書を出さず簡易課税制度の適用を受けないほうが良いケースがあります。それは、簡易課税制度の消費税が、本則課税制度(原則)より多くなるケースです。
図2-1 本則課税制度と簡易課税制度の比較(簡易課税制度が不利)
図2-1のケースでは、本則課税制度の消費税のほうが簡易課税制度の消費税よりも少なくなることがわかります。また、簡易課税制度を適用後、最低2年間は本則課税制度に戻ることができません。本則課税制度が有利になりやすい次の場合には、届出書を出すべきか再検討しましょう。
・過去の実額の仕入率がみなし仕入率を上回る(常時、本則課税制度が有利)
・設備投資など実額のほうが多くなる取引を2年以内に控えている(一時的に、本則課税制度が有利)
今回は「簡易課税制度選択届出書」について書き出してみました。
「簡易課税制度選択届出書」は簡易課税制度を適用するために作成、提出する届出書であり、特殊なケースに該当しない限り、8項目を記入するだけで完成することがわかりました。ご自身での届出書の作成にチャレンジしてみてください。
最後までお読み頂き有難う御座いました!
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